生きていく上で、予想だにしない大きなトラブルや、個人では対応しきれないリスクに直面することもあるでしょう。
そんなとき、生活を守るセーフティネットとなってくれるのが社会保障制度です。
中でも、将来に備えることができる「社会保険」は、安心して働くためには欠かせないもの。
一般的な会社に勤めるほとんどの方が加入するものですが、美容師の中には、一部の社会保険に加入していない方も少なくありません。
一体なぜ社会保険に加入していない方がいるのでしょうか。
ここでは、気になる美容師の社会保険についてご紹介いたします。
美容師の社会保険にはどんなものがある?
美容師が加入することができる社会保険にはいくつかの種類があります。
■健康保険
健康保険は、毎月保険料を支払っていくことで、ケガや病気の際にかかる医療費が3割程度で済む保険です。
自営業の方や学生などが対象となる「国民健康保険」の他に、勤め先の会社や組織で加入する保険(社会保険)、美容師専用の保険などのいくつかの種類があります。
■年金
年金には「国民年金」と「厚生年金」の2つがあり、20歳以上60歳未満の国民には「国民年金」への加入義務があります。
国民年金は、決まった年数支払いを続けることで、老後に「老齢年金」や「障害年金」などを受け取ることができる制度です。
厚生年金は、組織や企業で加入する年金です。勤め先の美容室が厚生年金に加入していると、将来受け取る国民年金に上乗せした形で厚生年金が支給されます。
■雇用保険
雇用保険は、失業した際の生活を支える「失業手当」や、妊娠・出産に際して受け取れる「育児休業給付」、離職後の「傷病手当」をはじめとするサポートを受けることができる保険のこと。
■労災保険
労災保険は、通勤中や勤務中などのケガなどに対して、厚生労働省から医療費などが支給される保険です。
本来はこれらすべての社会保険に加入しておくことが望ましいのですが、美容師の場合、勤め先の美容室によって加入率に差が出てしまっているのが実情です。
美容室の経営形態には、会社として組織化された「法人」と、「個人事業」の二種類があり、法人経営の美容室では、法律によって従業員全員がすべての社会保険に加入する義務が生じます。(勤務時間によっては、加入義務が生じない場合もあります。)
一方、個人事業主が経営している美容室では、加入義務が生じるのは「雇用保険」と「労災保険」のみ。
そのため、個人経営の美容室で働く美容師は、国民に加入義務がある「国民健康保険」「国民年金」を除く健康保険・年金には加入していないことがあるのです。
美容師はどうして社会保険の加入が難しいの?
一般的に美容師は、社会保険の加入が難しいと言われています。
それは、働いている美容室の経営形態に大きく左右されるからです。
働いている美容室が法人経営であり、正社員として働いているのであればすべての社会保険に加入する義務があります。また、雇用形態が正社員以外でも、正社員の3/4以上の労働時間と日数を目安として、社会保険に加入する権利が発生します。
しかし、個人事業主が経営している美容室で働いている場合、加入義務のない保険(社会保険・厚生年金)には加入できないことが多いようです。
これは、加入義務がないという理由とは別に、社会保険と厚生年金は“経営者が給与の約14%~14.5%分を(H29年まで段階的に値上げされていく)を負担しなければならない”ことが影響しています。
仮に月給20万円の従業員が5人いた場合、会社はひと月で14万円の保険料を支払うこととなり、とても大きな負担となってしまうからです。
これから仕事を続けていく中で、一体どのようなケガや病気が起こるのかは予測できません。いざという時の為に、社会保険に加入しておくことで得られるメリットはかなり大きいと言えます。
就職先の美容室を選ぶ理由は、「憧れのスタイリストが経営している」「通勤に便利な距離にある」などいろいろですよね。
将来のことを考えると、上記の理由に「健康保険や厚生年金などに加入することができる」という判断基準を加え、社会保障の内容が充実している美容室の中から自分の理想とする働き方ができるところを選ぶのも良いかもしれません。